岩井の本棚 「本店レポート」 第17回

細かいのいろいろ・コミケ情報

この「細かいのいろいろ」シリーズは数ヶ月に1度、その何か月の買取での釣果を報告するコーナーです。
もちろん良い本珍しい本はどんどんほかの人がトピックスに上げたりストックにまわされたりします。
なので僕の手元に残るのは、引っかかるものはあるけれど高くはならないなあ、一般的じゃあないよなあというものばかり。
釣果は釣果でも、ヤツメウナギやらヤガラがジャンジャカ釣れたカンジですか。
しかしそれこそが古本漁りの醍醐味であり、マンガ読みの醍醐味。
読みつづけないと見えてこない世界は確かにある・・・(湾岸MIDNIGHT)ってオレは北見さんか。

「攘夷幕末世界」森田信吾


すでにその怪作っぷりで多くのファンを生んでいる「攘夷」。
ここ1年入ってこずガッカリしていました。すごい珍作です。
噂にたがわぬあまりのワケのわからなさからか読後やたら興奮し、意味もなくお湯を沸かしたり、テレビ画面にパンチをくらわしたくらいです(実話)。

鎖国時の日本人は海外のヒトを夷狄よばわりしてバケモノ扱いしてたのですが、 夷狄とはやっぱり怪物だった、という話ですが、ラスト夷狄は地の虫の類で、 欧州はすでにそいつらに占領されてるとか、なぜか主人公まで夷狄になるとか、 ラスト1ページまで読んでもサッパリ何がなんだかわからない。

いきなり梵字が画面を埋め尽くすなど不条理な表現もあいまって、オレ本当に物語読んでるのか?
と不安になる作品です。
「攘夷!」
「夷狄」
「あるむすとろん」
「ギャゲエアエェ!!」「グゲァーッ!」
ひどく難解。この感じは「吸血女ヴァイオレット」「呪われた巨人ファン」に近いです。ただ、絵的に洗練されてるだけで雰囲気はまさにソレです。

ときどき何もしてないのにPCがツキューンとかいって落ちたり、 閉めたはずの冷蔵庫のドアが夜中開いてたりすることがありますよね。
アレきっとこういったヒトたちの、すでに自分の腕力では表現しきれないほどの狂大な表現衝動。
そういう行き場のなくなった情念やエネルギーがなにか影響してるんじゃないでしょうか。空中放電というか。

90年代ダメ密教系マンガはいろいろなところに枝を伸ばしていったものの、最後発にしてハイエンドが「攘夷」だと思う。
森田信吾ってこういうヒトだったんだ、と認識あらたになる。コレつぎ出るのはもういつになるのかわからないですよ。3150円。

「めざせ漫画家! 手塚・赤塚賞受賞作品集6」八木教広デビュー作「UNDEADMAN」収録


クレイモアで一気に人気作家の仲間入りをした八木教広。本作「UNDEADMAN」で、 ジャンプ新人賞のギャグ部門である第32回赤塚賞を受賞、その2年後に「エンジェル伝説」でデビューしました。

たいてい新人作家の過去作は初連載作の単行本に収録されるのですが、 この作品は収録されずのまま、地味ーにこの「めざせ漫画家!手塚赤塚賞」の6でしか読めなくなっています。

物語は改造人間ギャグ。絵はやはり当時から独特で、まんまるい女の子の目とか、穴でしか表現しない鼻とか、あまり今と変わりないですね。

Wikiには「UNdeadman」と記載されてますが正しくは上記です。
しかしこの当時の赤塚賞の審査員、って赤塚不二夫、楳図かずお、永井豪、藤子F、そして鳥山明、と、前代未聞のゴージャスさです。
ていうか手塚賞よりも審査員レベル高いんじゃ。こんな神クラスの審査員にチェックされると考えるだけで、僕だったら三日は夢見が悪くなると思う。

まんだらけ内部のマウンテンサイクルより数冊発掘。なので次の機会はありません。840円。

「魔剣X ANOTHER」林田球


偏執的ともいえる細かい描きこみとスプラッタ描写で、読む者すべてのドギモを抜く「ドロヘドロ」の林田球。
その人気にも関わらず、この本が絶版化しているのは、アトラスのゲームをマンガ化した作品だからでしょうか。
近未来の国際都市金沢を舞台に、魔剣を操る者たちの戦いを描く。コミカライズの域を越えたサービスぶりで、 ホントこの人ゴチャゴチャした建物の中描くの好きなんだなあ、血みどろと粘膜系好きなんだなあ、と嬉しくなります。

アフタヌーンの四季賞受賞、ていう経歴が直球に感じられるキャラクターたちもいいですね。
アトラスといえば金子一馬ですが、2巻と3巻に金子一馬と林田球の対談が載ってるのも貴重。
ベタはマッキー、主線はミリペンだとか。これ描いてるとき彼女はハタチか21かそこらのはずですが、すごいセンスの持ち主に歳は関係ないやと、自分のムダな歳の取り方がイヤになります。
1巻は容易に探せるものの、3巻がやや見つからない本作。
買った人だけが2巻のカバーはずした表紙にある、なぜ電球?ってビックリの画を見れます。全3巻2625円。

「関節王」三倉佳境


「関節王」といえば、柔術の強さに早くから注目し、古術・守点流を継ぐ柔術家がカラテや柔道をバッタバッタと倒してく話で、わりと一部マンガ読みには知られた存在でした。br> しかし僕が聞いた範囲では、みな「でも、ラストはヒドいから読まないほうがいい」と付け加えるのです。
期待しつつ読むと、格闘マンガとしては確かに面白いのですが、5巻、急に不穏な展開になります。

いままで古流派の強さを世間に知らしめるために闘ってきた38歳のロートル柔術家が、なぜかラスト付近で、多聞殺というバケモノを倒すために今までやってきたんだ! とコジつけ、 しかも勝負の結末は描かれないままバッタリと終わる。
ラスト2ページに至っては
「この物語はここで終わる。 ・・・答えは我々一人一人の心の中に在る」
と文字がズラーッと並んで終わり。スンゲー終わり方です。ア然としました。

もともと作者は13巻分くらいの構想を練っていたのですが、掲載誌グランドチャンピオンが廃刊決定し、仕方がなくバタバタと終わらせたのが真相のようです。

前述「攘夷幕末世界」もグラチャン連載でしたが、グランドチャンピオンという雑誌は何だったのでしょうか。
立原あゆみ、村生ミオ、矢野健太郎というどこの雑誌でも納まりのいい秋田オトモダチ系作家のほか、なぜかいましろ「ハード・コア」だの「攘夷幕末世界」を連載させるこのセンス。
謎でしかないですが、このセンスが今のチャンピオンREDにつながったと考えれば安いものかも。
全5巻、日焼け巻ありで1575円。

「眉白町」椎名品夫


アフタヌーンという雑誌は、他に類を見ない作家をデビューさせつづけ、 異才を見出すことがその存在理由になっている稀有な雑誌です(しかし2作目以降、小学館がいっつもヘッドハンティングしてしまうのですが)。
ですがこれだけの異才を集めたのは、アフタヌーンの懐の広さ。
出身者が若年者に限らず、日本人にも限らずという部分が大きいのでは。

92年の半年間連載された「眉白町」はアフタヌーンという雑誌の中でも、かなり異質でした。
異質な上に、1000ページ超!というのがうたい文句だった当時ボリュームのアフタヌーンで埋没しなかった才能。
しかしその才能がカタチとして残ったのは一冊のみ。

この本は足フェチの物語。それもレッグではなくフット。しかも纏足フェチの話なのです。
小足の娘と、その娘を溺愛する叔父、そして纏足・・・絵柄的には高野文子、もしくは岡崎京子と評されますが、どちらかといえばイラストレータの赤木仁でしょう。
耽美で寓話的なストーリー、人を食ったようなペンネーム、紫に金文字というありえない装丁、どこをとっても唯一のもので、類似作があれから15年経っても出現しないのはさすがアフタヌーンです。

発行当時は新潟に住んでいたのですが、発売日に大きな書店をまわって調べたところ、新潟市内で3冊しか配本がなかったのではないかという結論に至りました。
実売で1000部とかそんくらいではないでしょうか。ただ部数以上に「手放されない本」の印象が強く、熱狂的なファンが少ないながらも未だにいるのもわかります。 僕は一年で約20万冊買取をしますが、一年で1冊買取るかな・・・といった出現頻度。小口少焼け。1050円。

「ヤングキングアワーズ増刊ヘルシング特集号+アワーズプラス特集」 「アフタヌーンシーズン増刊9号」ほか


マンガ読みには、一線また一線と、ひとつ踏み越えるたびに確実に世間が遠くなる作品なり作家なりがあります。
そのひとつであることは間違いないのが平野耕太。
大同人物語を読み、コミケで男屋の本を買うために並び、「拝テンション」をオクで落とし、 そういや「以下略。」ってどうなったんだっけ?と友人に問うようになったら、いっぱしのマンガ読みといってよいでしょう。

平野耕太自身も不本意な出来だと感じていたテレビ版を再構築する意味でOVA化が開始。それを記念して発行されたのがこの「ヘルシング特集号」です。
この本には第二次大戦の若きウォルター&アーカードと、ミレニアムの面々が登場する外伝「THE DAWN」が収録。 1〜5話までの「ヘルシング特集」と6話を収録した「アワーズプラス石田敦子特集」のセットです。

本来ヘルシング特集についていた附属のDVDは欠ですが、本編のOVAが既に発売されたいまではこのDVDに意味はあまりない気がするので、 単純に「ヘルシングの読んでないとこ読みてぇぇ!」用途向きです。

ちなみに若い頃のウォルターと大尉の人狼姿、アーカードの少女姿はこれでしか読めません! ・・・まあ6話で結局尻キレトンボになり、その後が出てこないのも平野耕太氏らしいといえばらしいのですが・・・。
あと余録ですが、吉本蜂矢の読みきり「大雨★hello警報」も読めます。2冊で3150円。

「シーズン増刊9号」は平野耕太の読切未収録「彼らの週末」が掲載されています。
ほかにも芦奈野ひとしの未単行本化連作「PositioN」の5話、「二軍昆虫記」の森徒利の、小学生が奥さんになるという、 いかにも「らしい」作品「奥様ランチ」などが掲載されていて、ヒラコーファンのみならず細かい探し方をするマンガ読みの人におすすめ。840円。

ほかにも平野耕太といえば定番中の定番ですが「拝テンション」「コヨーテ」あたりもちゃんと揃えてあります。

「悟空道Tシャツ」


「シグルイ」アニメ化で盛り上がる山口貴由先生の前々作にあたる「悟空道」のTシャツです。サイズはLでもちろん未着用。悟空と三蔵ら4人の顔入り。

「覚悟のススメ」と「シグルイ」という強烈過ぎる二作にはさまれたこの作品は印象がやや薄いのですが、それは「山口貴由の中では薄い」だけで、 世間一般の濃度でいったらもう充分に濃ゆくて塩分高め、朝読んだら昼には鼻血が出るくらいの濃度。

日本人は三蔵っつったら美女にハゲカツラ、のTV版のイメージがあるため女性と思われがちですが、ホントは当然オトコです。
当作では三蔵は女性、ということになっているのも仕方がないのですが、すぐにハダカになるのは如何なものでしょうか。

尼エロに興味ある、もしくは円谷の夏目雅子版・西遊記がエロのトラウマのひとつだ、という人は読んでみては。

「おそらの迷子」田中浩人


「こた」の名で同人活動もしている田中浩人氏の唯一の商業単行本です。
SF好きな氏らしく近未来、異星人ネタもよくまとめられており、でも同人誌での作風ほどネガティブではなく、ホロっとくる掌編が多いのがいいです。もちろんロリありで。

しかしそんな本作も、ビブロスがらみのゴタゴタで絶版に。
それに気がついた方により一冊また一冊と保護されてゆき、ついに残るはあと数冊に。 おそらくこれがまんだらけ最後のストックです。気になっていたものの手に入れられずじまいだった方、ラストチャンスですよ。840円。

「流れ星はるか」夢ノ二


夢ノ二は大石まさる氏の成年コミック時の別名。
「環水惑星年代記」発売記念ということで。

水に覆われた世界が舞台の本作でファンになった方が旧作を探し始めたせいか、 一部見かけづらい作品が出てきたようですね(余談ですが絶版だった「空からこぼれた物語」も増刷がかかったようなので、某通販サイトのチョイ高で買う前に探してみては)。
大石氏の描く「ちょいH」はホノボノとしていて生活感があり、カラっとしていて個人的には好きです。

気がついた方が少しづつ買われていったので、こちらもまんだらけでのラスト在庫になってしまいました。なお夢ノ二名義ではこのほかに「流れ星はるかプラス」が発行されています。

「快楽天星組」vol.1〜9まで


OKAMAの表紙イラストに惹かれて星組を買っていた学生時代。
手描きからCGへと氏の手法が移行し、それとともに氏のフィールドも広がり、いまや世界中に氏独特のタッチのファンがいる作家の一人となりました。 「めぐりくるはる」そして「スクール」がマンガ青春のただなかだった同時代的世界観の持ち主であれば、この星組のセットに盛り上がる方もいるのではないでしょうか。

世紀末からミレニアムまでのごくわずかの期間の快楽天は、一部の人たちだけで、 自分たちが関わっているものがホントの最先鋭であることを秘匿しつつコソコソと楽しんでいたような雰囲気がありました。
星組は失敗して確かこのあと数号で廃刊しましたが、当時の雰囲気は味わえます。9冊で2100円。

「植芝理一 CGイロハのイ」


どんな本かというと、ホントのPCのド素人にCG処理を覚えさせ、絵を描いてみよう!という企画本。
ポータルサイト「Web現代」(現MouRa)にて連載されていたものを本にまとめたもの。
本書において最大の疑問は、
「しかしなあ、植芝理一ってコトはないんじゃないか」
という点でしょう。
2000年ごろはコミックの表紙が、手描きからCG彩色へと変化しつつあった境目の年代。
そのため、今から見るとかなりトホホなレベルのCGが多いのも事実。
そんな中ド素人の植芝氏がCGを・・・というのは確かに驚きです。なにしろ
「スペースキーってどれ?」
というレベルの素人ですから。

だいたい他のキーはわからなくとも、スペースだけは普通分かるものです。
有名な「パソコンを立ち上げた」ヒトの逸話ほどじゃなくとも、まだまだファンタジスタはいるんですね。

サブタイトルの「人気漫画家がCGに挑む!」って、まあ人気漫画家かもしれないけれど、 植芝氏といえば民俗学や密教系の雑多なオブジェとロボットや玩具が散乱する細かすぎる背景、 異常な性癖をもつ人間ばかり登場という、まあ大雑把にくくるなら作風は変態系、それも内面、としかたとえれないような方。

「夢使い」アニメ化時に、先入観なく原作どんなんだろう、と思って読んだアニメ派の多くがあまりの変態さに仰天したそうですが、うなづける話です。
それに比べたら「謎の彼女X」なんて一般的もいいとこ。僕も氏がちばてつや賞を受賞したとき、衝撃を受けてモーニングからスクラップした記憶があります。

読み順は「ディスコミ1・2巻」→「謎の彼女X」→「ディスコミ3〜8巻」→「ディスコミ精霊編」→「夢使い」がオススメで、のこりの学園編やディスコミ9巻以降は「時間があったら」でいいと思います。
そんな植芝氏がCG企画本!! 氏の作風を知る人ほど驚くのではないでしょうか。
じゃあ新刊書店では寺田克也の「ペインタ本」と同じ棚に入ってたのかと思うと感慨深いですね。630円。

「大根性」三谷幸喜


三谷幸喜の自伝的小説で、なぜかジャンプノベルで連載されていたものです。
赤い背表紙のジャンプJブックス(ワンピとかナルトの小説版が代表的)で発行されたため、 当時すでに三谷幸喜は人気絶頂の脚本家だったのに、さすがにジュニア小説までみなおさえてなかったようで、この本をスルーしたファンが多かったようです。

本人も小説は苦手、とふれてますけれど、ジュニア向けを意識して腐心して描いているのが伝わってくるこの人の良さ。内容もやはり三谷ワールドとしか言いようがない本作です。1575円。
ちなみに絵は薮野てんや。・・・ホップステップ賞だか赤塚賞を受賞したのみで芽が出なかった人ですね・・・。

「皇国の守護者」Tシャツ


ウルトラジャンプのアンケートに答えた人が抽選でもらえたもの。
色はこげ茶で、サイズはL。
1・2巻の表紙の絵が入ってます。
もちろん未着用で当選証書つき。2625円。

連載したり中断したりでもどかしいこと山の如しですが、 待ちきれず小説版を読み始めた多くの人が塩山版イラストの表紙の新城をみて「こんな帝都物語の嶋田久作みたいな雄々しい軍人だったっけ、新城」と違和感を覚えたそうです。
伊藤悠の三白眼新城がそれだけインパクト大だったということでしょうか。

「ソロモンの指環」ほか 白倉由美


当時の活動を知らず「コミック新現実」から入った方や平野綾目的で「ロリータの温度」新海誠がらみで「きみを守るためにぼくは夢をみる」に触れ、 そこから逆流してきたという三世代目のファンも出てきた白倉由美。
いつかきちんと集めよう、と秘めている方も多いと思うのですが、しかしさくっと手に入るのは「東京星」「セーラー服」「贖いの聖者」「グレーテルの記憶」あたりまでですよ。
今回は「ソロモンの指環」が出てきました。840円。

あとはCDシングル「お月様でKissをして/アイスクリームの呪い」。
これは白倉由美ベストセレクションに収録されていますが、モノとしての価値で。
盤は問題ないですが、ジャケットに少汚れがあります。630円。あとは前回出した「スゥエード・キルシュ」もありますよ。

「もやしもん」3・4・5巻セット


10月からアニメになる「もやしもん」ですが、揃えづらいものだけで揃えました。
3巻特装版の帯付、4巻初回版の本だけ、5巻初回版の本だけという別装丁セットです。

1巻と2巻は別装丁のものがないので省略しました。
3巻は帯がついていますが、4と5巻の初回版にはもともと帯がついてません。
結果的に初回版をもっている人が、中の本だけ売ることはめったにないのと、盛り上がる前に発行された3巻の特装版は流通量がやや少なめ。
なので、この装丁で揃えている人はそういないはずです。

4巻は、紙カバーの印象が強いもやしもんの中で、唯一ビニールコーティングの光沢カバーなのが意外です。4200円。

「素敵なあなた」平口広美


先ほども触れたように、本のスタッフは年間20万冊の本を買取するのですが、 それを何年も続けている自分や竹下さんがこれまでの買取キャリアで初めて当たったという本です。
平口広美の本で、まだこんなのあったのかという点で率直に驚きました。松文館あなどれずですな。

内容はというと、平口広美がAV男優として活躍していたAV中興期の日々の話ですが、 なんだか自分の行き方に疑問をもっていた当時のことらしく、ひどく投げやりで、自身の恋愛についても暗い。
不倫してヤリまくってフラレしかもその女に未練タラタラ、そのうえ女の悪口を書く。まったく共感できません。1050円。

それにしてもこの当時のエースファイブコミックスって、上総志摩とうのせけんいちと平口広美が同レーベル内にいるという、 このラインナップの統一感のなさ。懐が深いともいえるのですが。
しかし深いからといっても中身が詰まってるわけではなく、その懐はカラッポでガスばかりです。それが活動停止寸前の松文館テイストです。

「なるたる」全12巻セット


ここ2ヶ月に限るなら、なるたるの探求がひどく増えました。
いうまでもなく「ぼくらの」人気ですが、なぜこのタイミングで「なるたる」単行本を増刷しないのかというのが講談社に対しての最大の疑問です。
なにかでモメてるってわけでもないし。

オンデマンド版は確かにあるものの、全巻集めると12000円近くかかり、旧装の倍近くになるのも解せません。
鬼頭莫宏はただ読めればよいという作家ではなく、作品をちゃんと手元に揃えたくなる方です。 きちんと読んだ人はそしてトリコになる(とはいえ合う合わないが激しいのも事実ですが)作家。

まあハマッてくるとガリガリの少年少女がグサッと尖がったモノに貫かれて死ぬ、 それもとてつもない三白眼で、というシーンで「キター!!」とかいうようになるかもしれないのですが・・・。

「らんぽう」30〜37巻


文庫になってないのはともかく、実は未完だということはあまり知られていません。
らんぽうはアニメにもなった作品ですが、その壊れっぷりはすさまじく、途中から「何がギャグなのか」の境目があいまいになってきます。
ギャグというのはホントに難しいですね。
壊れた消えたというたとえに出されることが多い作家ですが、それはこの作風から連想されたのではないか。と考えてしまいます。

この作品後、じっさい内崎まさとしは消えてしまいましたが、以前お客様より噂で聞いたのですが、ヤングキングでヤンキーマンガを描いてた時期があったそうです。 ホントでしょうか。また東北のどこかで活動中、とも聞きました。
今回はバラではまず出ない最終巻近辺の30巻以降です。
前述したように、最終巻ですが、最終回が掲載されているのではないのでご注意を。315〜1050円。

「チャンピオンREDセレクションズ2」


チャンピオンRED2007年3月号のふろく。「スクライドビグンズ」というスクライドの外伝が表紙ですが、 ちいさーく「マカロニほうれん荘/原作鴨川つばめ/ストーリーアート山口貴由」と書いてあるのです。

エッ山口貴由がマカロニほうれん荘!?
ビックリしつつ読んでみたらこれが世紀の大傑作でした! あの山口貴由のクドさが鴨川つばめのカラッとしたスピーディな起承転転転転転転結には合わないんじゃと思いきや、 逆にすごい相乗効果に。企画したやつ誰だ! 最高ですよ!

とにかく両先生のノリノリぶりは妬けるほどで、山口先生の細かすぎる描きこみにはスゲー愛情が感じられます。
主要キャラ全部鴨川タッチで描いてるし、背景一人一人も鴨川風。なんといってもひざかたさんがメチャカッコいい! 1575円。どっちかのファンなら絶対損しない出来です!

「ピーナッツブックス」鶴書房/角川書店版


結論から言うと、揃いませんでした! すみません!
欠巻は66/68/69/70/79巻の5冊です。
全体の状態もやや汚れとイタミで、前半はカバ折れもあり、コレクション向きではないです。

バラで出たら1000円クラスの70巻〜86巻の状態良巻が14冊など、実質ほとんどは40巻台後半の値段です。まず読んでピーナッツの面白さを味わいたい人むき。

31500円。復刻版ピーナッツボックスが5万以上したことを考えればお得感は高いですよ。

「マイコンゲームの本4」


今は亡きマイコン雑誌(パソコンに非ず)「I/O」の別冊。
ライバル誌だった電波新聞社でいえばベーマガに当たるものでしょうか。読者投稿のゲームのプログラムを集めたものです。
なにしろ25年前というと表4の広告がMZ-1200という時代のモノですから、 対応機種も激古。PC6001・8001・MZ80B・FM-8がメインというから、この本を「プログラム入力用に使う」というのはかなりむつかしいと思います。

いずれの機種もエミュがあったと思うのでプログラムを走らせることは可能かもしれませんが、 こういう本は雰囲気を楽しむものでしょう。ハムとか無線・機械好きの人たちが、新たな分野・マイコンにゾロゾロ移動してきて、細々と開拓してたあの当時の雰囲気を。

しかし当時は緩かったのか、いくら素人のプログラムだからといって、 あからさまにパックマンだったりラリーXだったりクレイジークライマーだったりするのを「パックンボーイ」だの「クラッシュ」 とテキトーに名前変えて勝手に移植して公開するというのはいい度胸、といわざるを得ません。
サンライズから許可取ってない、ガンダムのゲームなんかも勝手に作られてるのがスゴい。210円。
それにしてもこのMZ-1200の角張ってるスタイルのカッコ良さといったらないですね。MZ1200とかX1cのデザインでWIN機出たら絶対買いますよ僕。

電波新聞社「A.V.G&R.P.G」シリーズ


そこまでPC暦古くないやという人には、ベーマガ別冊の「AVG&RPG」シリーズが入荷。
年代的には初代ハイドライド〜ザナドゥシナリオ2、メルヘンヴェール2くらい。

光栄あんなデカくなったけど、黎明期はキミたち女の子のこと診察と称して腹裂くようなゲーム作ってたよね・・・とかエニックスあんなデカくなったけど黎明期はキミたちミニゲームに失敗しただけで女の子が電ノコでまっぷたつになるようなゲーム作ってたよね・・・なんて望月かつみにうっかり関わっちゃった黒歴史を知識としてじゃなく、 当時リアルタイムで実感してた世代用の本たちです。

当時バカ売れしたこの本、言うまでもなくザナドゥのマップとモンスターデータなど、攻略のためにみな買ったんですよ。僕もそうでしたね。デゼニワールド・はーりぃふぉっくす・ブラスティー・ザ・スクリーマー・オホーツクに消ゆとか、懐かしいタイトルいっぱい。
基本はもっと高い本なんですが、表紙ヤブレでカバーも折れあり、だから全部数百円です。

「e-ジャンプ 2000年1月18日増刊」


時は流れてそれから15年後の2000年には、買うとき30万以上した日本製PCの巨人98はアキバで中古機が1万以下で投売りされ、家庭用機の覇者はニンテンドーではなく家電屋のSONYにという誰も予測つかない結果に。

当時マルチメディア詐欺師がたっくさん跋扈してたみたいで、コミックもデジタルでなんてコトバにだまされた大手出版社がマンガをROMに焼き付けただけのもので数千円とろうと考えたり、エロ本も雑誌本体が2000円近くしてCD-ROM一枚が付録についてるだけ、なんてので商売しようとしてた時代です。
集英社もゲーム会社スクウェアやエニックスとのパイプを活用して「e-ジャンプ」というジャンプ兄弟誌をつくってました。まあFF最新作とかドラクエ最新作南下の特集載せてましたね。

しかしそれとは別に、この本には鳥山明の単行本未収録「HYOWTAM」オールカラー8Pが掲載されており、そちらに要注目です。DQ VII が出た当時なので多少の顔見世も兼ねてだろうと思うのですが、絵本チックでコミカルな掌編。これの価値で1050円。

ちなみに初代PSで見れるROM2枚付ですが、この中に漫画家たちのメッセージムービーが収録されており、なんと冨樫義博氏がハンターハンターに対しての意気込みを語るシーンがあるとのことです。
この本は未開封で入荷したので残念ながら内容は確認できませんでしたが、見たことのある人に聞いたところ、さあやるぞ!! がんばるぞ!! みたいな、 ウソつけコラ的ムービーらしいんですよ。もちろんこの本を買っても、その動画をどこかにアップしたりすることは著作権に触れるのでやってはいけないのですが!!

上記は全て、コミケ最終日の19日に出します。本店2のショーケース内や、店内にて。
これ以外にも過去このコーナーで上がったものや岩井の本棚で取り上げたものも出てますので、ぜひぜひまんだらけ中野・本店/ II へ。
マンガ狩りを終えた狩人の皆さんに、僕の釣果を笑っていただければ幸いです。
※この記事は2007年8月17日に掲載したものです。

(担当岩井)

お問い合わせ (営業時間:12:00〜20:00)

まんだらけ中野店(詳しい店舗地図はこちら)
〒164-0001 東京都中野区中野5-52-15
TEL:03-3228-0007 / e-mail:nakano@mandarake.co.jp