岩井の本棚 「マンガけもの道」 第10回 |
似顔絵が死ぬほど下手なヒト
(図1)
たとえばスポーツ新聞の4コママンガなど、初見の人間でも一発で分かるように描かないといけないのですが、 いわゆるその道の大家ともなると抜群の腕力で実在の人物を描ききります。
(図2)
(図3)
(図4)
野球選手の中では屈指の描きやすい顔、といってもよい特徴をもつ王監督。
みなギョロ目とすぼんだ口、は共通してますね。
(図5)
(図6)
ところがこれも王貞治だっていうんですよ。そういって譲らない人がいるんですよ。
え?近所のホームセンターの店員のようなこの兄ちゃんが王貞治?
これだったら図1のほうがはるかに王選手っぽい。わずか7画で描いた図1より もはるかに手間をかけているのに出来栄えは半分以下。
とてつもない似顔絵の下手さ加減ですね。
しかもそんなヒトが、野球選手の実録コミックを描いてんです。
この大暴挙は1990年に、松田尚正さんの手によってごくごくヒッソリと行われました。
とにかく松田先生の作品には、実在の選手が大挙、出撃しているのに、まるで日本球界の話に見えないほどヘタ。
このヘタッピーさはシロウトであればアリですが、これがプロの絵だ、と頑強に主張するんなら、作画家を抜擢した奴はちゃんと責任取ってるのか、をまず問いたい所です。
(図8)
(図7)
図7のこれが長嶋です。濃いヒゲそりあとと割れたアゴさえ書いとけば似てくるだろうに、その気力ゼロ。
そして2ページ使った見開きの絵がこれですよ。図8。
誰も見てないからってあからさまに手を抜かれると、さすがに切なくなる。しっかり働きましょうよ。
(図9)
たとえば、主人公である江川はこれ(図9)。
江川といえば大耳、そして豊かなほっぺ。
それを無視して、このさわやかフェイス。
これはイチローの背番号を30にしただけで「エガワです」と名乗らせるような暴挙だよ。
もうちょっと似せようって、少しは編集も意見出さなかったんでしょうか。
(図10)
(図11)
(図12)
(図13)
マジシャンですね。
江夏といえば細い目とニキビあとの残るゴツゴツの肌。
良くも悪くも凄味のあるヤクザ顔のはずなんですが。
子供ですよ。これじゃ床屋に行った時に「ボク、何年生?」と聞かれかねない童顔ぶり。
頭の一つもなでてやりたくなるようなこんな子供が、シャブやバクチやって逮捕されたことがある、なんて信じられません。
主人公の江川や江夏がこの程度の描き込みなんだから、脇役に至ってはたぶん資料すら目を通していないね。
見てください、こいつら。
中畑と原と篠塚と山倉ですって(図12)。
これが藤田巨人を支えた名プレイヤー達だってんだから泣けますね。
僕が球団側なら、こんな安っぽい顔の連中はトレード要員ですよ。
そして第3作目の「野茂英雄物語」でも画力はそのまま。
これが野茂です。(図13また小学生ですか。江夏パターンですね。
そいでこの陰気な台湾人みたいのが桑田だそうですよ(図14)。
桑田って絵に描きやすいキャラクターだろうになあ。
(図14)
これが世界屈指の名プレイヤーかと思うと野球に対する愛情が一気に萎える、ヘナチョコ選手どもです。
したって憎たらしい顔してますよね。人徳なさそうです。
(図15)
(図16)
高橋政伸をみて「絶世の美男子だ」などといっちゃうかもしれません。
ホイス・グレイシーが猫そっくりに見えたりするかもしれません。
それにしたってこういう真ッシロケな作品が天下の大マガジンに掲載され、 あまつさえ単行本にまでなっている、となると、その裏にある真意がいかなること かはともかくとして、ラッキーボーイは実在する!! と納得できますね。
奇跡の予感がする松田尚正先生のコミックスは、本店においてあります。
前例のないスカスカ具合に興味を持った方は是非。
※この記事は2004年11月17日に掲載したものです。
(担当岩井)